ひとりは自由だけど、ひとりじゃ好きなことはできなくて…

エストニアのTransferWise社で

[株式会社 Kaeru 代表取締役の大崎弘子です。コワーキングスペース運営者限定アドベントカレンダー2018に参加してこの記事を書いています。2011年から参加させていただいていて、毎年この時期に他の運営者の考えを知ることができて、振り返るよいきっかけになっています。「今プラス」のRyouma Nakanoさんからバトンを受け取りました。今回はコワーキングスペースを7年間運営してきて、なぜcoworking bar(コワーキングバー)を作るという血迷い方(!)をしたのかについてお話ししたいと思います。


ちょうど8年前の今ごろ、わたしはオオサカンスペースというコワーキングスペースを作りました。

Coworkigという言葉をわたしは深く受け止めていなくて、「共に働く」という文字通りに受け止めています。仕事をしている場所が同じでも共に働いているし、リモートで同じプロジェクトをしていれば共に働いていると思ってます。コワーキングスペースという場所については、電源とWi-Fiがあって、仕事をするのに適した場所です。自分が行きたいコワーキングスペースはそこに行けば誰かがいて話して刺激になったり、遠くに行ったときは地元のコミュニティにアクセスできたりする場所です。遠方に行ったときには集中できる静かなコワーキングスペースを求めることもあります。
コワーキングスペースはたくさんできていて、なんでみんなこんな大変なコワーキングスペースやりたいんだろう?って思ってます。経営は難しくて、潰れるところもいっぱいあるし、とくに今年はほんとにほんとにいろいろショッキングでした。経営が安定して収支トントンならうらやましがられる世界で、儲かってる雰囲気なんて7Fの星野さんやパセラのコワークを代表としてほんの少数でしかなさそうです。
コワーキングアドベントカレンダーを最初から読んで思ったのですが、経営課題をクリアした古いコワーキングスペースも、順風満帆とは行かず、いろんなことがありますね。うちも同じです。コミュニティ作りって人を集めることだと思われがちですが、コミュニティを守る仕事の方が大事ですし、こっちの仕事はストレスが多いです。コミュニティクラッシャー(自分本位すぎる方、アンガーマネジメントができない方、利用方法が荒い方、ルールをほとんど守らない方、など)との戦いとも言えます。言いたくないことを言って、恨まれて、誰も褒めてくれなくて、悪口を言われるというのが仕事です。それを覚悟してはじめたつもりでも、5年、6年、7年、8年と経つに従って、心に澱が溜まってたんだなぁと思うことがありました、もう掃除しましたけど。他の運営者も同じじゃないのかなぁと今年は強く感じました。
でもその澱はもう掃除しましたし、やりたいことなので社会が必要ないといって誰も来てくれなくなって潰れることがない限りは続けます。わたしは、自分が欲しくてコワーキングスペースを作りました、だからずっと運営者でありながら利用者でもありたくて、会員番号は1番です。「自分が欲しかったから」と言い続けてきましたが、この部分が少し言語化できました。スキルを持っている人がそのスキルを必要としている人や会社と出会うきかっけが増えればいいなぁと思ってるんです。スキルとスキルのかけ算が起こって最高の仕事ができる瞬間に立ち会ったときは鳥肌たつかと思います、やりたいこととできることが合わさってサービスが生まれる瞬間もゾクゾクします、同じ価値観を持つ人と違う価値観を持つ人の建設的な議論は知的好奇心を満たします。そんな自分にとって最高の場所が「オオサカン」なんです。いままでやってきた数々のチャレンジは「オオサカン」があるからできたことばっかりです。
株式会社 Kaeruは、コワーキングスペースを運営するために作られた会社です。ほかに本業は一切なく、コワーキングスペースの運営で事業を成立させ、自分も食べていかなければならない状況でした。2011年に考えた限り、大阪の本町でオオサカンスペースを成功させるには月額9,800円の会員が100人いることが必須条件でした。社会の課題を事業に変える(黒字化)するには、課題全部を解決することはできません、できるならもうその課題はないはずです。課題の中に細い、細い一筋を見つけてその範囲を事業化するのが社会起業だと思っています。その道筋上にいない人にとっては「お前には課題が見えてない」と感じるし、岩があって仕方なく道を細くしたり、迂回することもあります。オオサカンの場合、「高い」「気軽に行けない」という気持ちもよくわかっていました。いつでも気軽にふらっといけるほうがいいですよね、料金も安い方がいいですよね、でも、当時経営として成り立たせた上で、協業できる文化を作るにはこの料金体系しかなかったんです。

解決する課題を絞ったことで、友達の友達の友達、そのさらに友達が面白がってくれて、会員になってくれて、赤字時期はほんとにわずかでした。おかげさまで、落ち着いて腰を据えてコミュニティと向き合うことができました。サブスクリプション(月額課金)サービスは運営に手間をかけないほうが利益が残るのですが、その道は一切選びませんでした。コミュニティに対してできることは未だに全部やってます。心がけていることや実践していることがたくさんあります。オープンから2年間はひとりでオオサカンを運営していましたが、その後スタッフが増えたことでできることも一気に広がりました。

「おはよう」「お疲れさま」って挨拶しあって、昼になると「ランチに行く人!」と声がかかったり、自然にダイニングエリアに集まってお昼を一緒に食べたりといったことが自然な習慣。夜に家を空けにくい主婦の方やお酒を飲まない方もランチなら参加しやすいですよね。ランチ好きな方とは遠征したり、人数が少ないときは新店を発掘したりしています。ランチで外に行っていると、お弁当派とお外ランチ派に別れがち。そこで曜日を決めてスペース内でお味噌汁を作り、いつも外に行く人も中で食べるきっかけにしています。最近は「ごはんの日」が増えて夕方の小腹空いた時間に炊き込みごはんや混ぜごはんなどが振る舞われて交流のきっかけに。

持ち寄り部は、メンバー同士の交流会&新メンバー歓迎会です。参加費はなしで食べものと各自のドリンクを持ち寄ってはじまります。「今日食べる夕食を持ち寄って一緒に食べよう」がコンセプト。価値観はそれぞれ、外食にお金をかけたくない人もたくさんいます。そこで今日食べる夕食を持ち寄るならそれぞれの負担を増やすことなく交流できるのでは?と考えて始まりました。19時からスタートしていますが、遅刻や欠席という概念はないので早く帰りたい人、仕事の終わり時間が読みにくい人も参加しやすいことが好評です。急な参加もしやすいです。

持ち寄り部
持ち寄り部は晩ご飯とドリンク持って参加

チェックインしている人同士だけが交流できる独自のシステムがあります。「前に話したことがあるけど名前などが思い出せないから声かけにくい問題」を解決するためのもので、目に見えている誰がいまここにいるかという情報だけに限って可視化しています。外からも確認したいといわれますが見たいのは当然だと思いますが、見られたい人はいないと思いますのでスペースでチェックインしている人だけが見ることができます。名前が思い出せなくても20人くらいに絞られた一覧を見ることで、「あっ!そうだあのMyISBNの人だ!」「ああ、カメラマンの人だった!」と思い出すことができるのです。「実は今日飲みに行きたい気分」などとコメントを投稿することもできます。

「食べてもOKなエリア」をダイニングエリアに限定していることで、清掃が楽になるのはもちろん(笑)ですがいただいたお土産を一緒に食べながら会話が弾んだり、ほっと一息つく人同士が自然に話したりするきっかけになっています。ダイニングエリアは一番話しやすいですし、スタッフもほとんどこのエリアにおります。船場経済新聞本町ブログを運営していて、本町エリアの気になる情報を共有しています。新しいお店ができたよ、気になるお店ができたから一緒に行かない?などの誘いも日々あふれています。
年に数回たこ焼きパーティがあります。クリスマスパーティは家族参加大歓迎、今年のクリスマスパーティという名の「タコパ」でも子ども達がいっぱい元気に遊んでいる中、15リットルのたこ焼きを焼きました。
2018年12月製造のたこ焼き
2018年12月製造のたこ焼き

2018年12月クリスマスパーティ
2018年12月クリスマスパーティ、家族も一緒

メンバーの悩みや相談によって、○○のイベントをしようという流れになることも多いです、Shoot!(メディア向けの記者会見イベント)、プレスリリースJelly!やGTM(Google Tag Manager)勉強会などほんとにたくさんのイベントを開催しました。
akippaの金谷さんが最近来てないってことでメンバーと改めて交流
akippaの金谷さんが最近来てないってことでメンバーと改めて交流

定例となったものも多く、確定申告Jelly!は毎回税理士さんに来ていただいて毎年申告前に開催していますし、広報勉強会は毎回80〜100人が参加する大きいイベントに育ち、オオサカンメンバーと広報担当者の交わる大きなコミュニティになっています。

 
また、アフィリエイトについてはメンバーの求めに応じて事業化することになりました。2014年に生まれた「atus」は、会社員でパソコンを使ってお金を稼ぎたい人のためのプログラムです。手法としては、ブログを使ってその商品を買う人に向けて必要な情報を提供し、欲しい人をランディングページに送り届けるというものです、古くからインターネットにいる方には今さら感があるかもしれませんが、どう少なく見積もっても100人以上は一定の成果をだしているので、時代が変わっても大事なポイントは変わっていないのだと思います

atusに来て稼げるようになった人たちがコーチになってくれていま20人以上が月1回教えてくれていることもあって、いまオオサカンより大きいコミュニティになっています。うちのコワーキングでもできませんか?と言われるのですが、伝えていることより集まっている人がもっと大事だと思うので分散するのは難しく、コーチが自分の地元でやりたい!というケースだけ地方展開を考えています。コワーキングスペース×教育というのは各地で行われていて、フリーランス養成、プログラミング講座など、特に「稼げる」ことに直結する教育がコワーキングスペースと相性が良いのだなぁと思っています。
オープンした年からずっと年に1回は最近気になる国、つながりがある国を中心に誘い合わせて視察にでかけます。2018年はバリ、ヨーロッパ(スウェーデン・エストニア・スイス・フランス)とホーチミンに行ってきました。海外にでると日本の当たり前が当たり前じゃない、その視点がビジネスにすごく役立っているし、一緒に行くことで関係もぐっと深まります。オオサカンに来てくれた外国人メンバー(Digital Nomad)と仲良くなって「今度、あなたの街に遊びに行くね」ということが実現するようになってきました。


設備面でもビジネス合宿所「尾崎の家」、会議や小規模イベント向きのシェアリビングルーム「オオサカンリビング」などを外に作ったりしました。スペース内でも使われ方を考えて年に2回くらい模様替えをしています、模様替えでは済まず、オンラインミーティング部屋を作る工事をしたり、そして待望のBarカウンターを買ったりもしました。



コミュニティはメンバーの入れ替わりも大事です、オオサカンの場合は2年で半分くらいが入れ替わるサイクルなので、引っ越しや環境の変化でやめた方も含めるととても大きなコミュニティになったと思います。そのコミュニティの周囲には、広報勉強会IT飲み会atus、みんなの経済新聞ネットワーク、谷上プロジェクトなどがあり、さらにできることの幅が広がっていると思っています。最近ようやく会社の公式サイトができました(完成とはまだ言えません)。
とにかくやりたいねん!だからやる!そう決めてオオサカンスペースはオープンしました。もうすぐ7周年、7年間ずっと毎日考えて、行動して、そして続けてきたんです。その結果、協業率は60%を超えましたし、肌感ではありますがメンバーの平均年収がめちゃくちゃ上がりました、少なく見積もっても倍くらいになってるとおもいます。
一方で課題も見えてきます。オオサカンで交流イベントを開催していても、その時間に集中して仕事をしたいやオンラインミーティングをする人も増えているので邪魔をしてしまうのではないかと考えてしまうことがありました。いまは交流イベントの日は集中できる場所としてメンバー向けにオオサカンリビングルームを無料開放することで両立させています。また、コワーキングを利用していない人や他の場所で仕事をしている人の交流機会を持てないか、もっとオオサカンメンバーの仕事の幅や他のコミュニティとコラボできる可能性が広げられないか、とも考えるようになりました。
そう思っているときに五反田のコワーキングスナックができました、ステキで大好きです。そこに行っていて大阪にもこんな場所が欲しいなぁと強く思いましたし、ずっとその話しをしてた気がします。10席くらいの小さい家賃安めの居抜きの箱で、スナックの跡地がいいなぁと思いながら毎日メールで届く情報を見ていました。コワーキングスナックに行った直後の2017年6月から物件情報を毎日とりだしてました。

そして、11/16に届いた物件情報、ジャーン。
coworking bar 「コナイト」物件概要
coworking bar 「コナイト」物件概要

こ、これは「船場ララバイ」ではないか、オオサカンリビングがあるビルの2F、すぐにメールして内覧しました。ここでやりたい、いや、でも、広すぎる、高すぎる、うーむ…どうすれば、事業として成り立たせた上でやりたいことができるのか、物件に出会ってから、できるか、できないか、ずっとずっとずっと考えていました。
コワーキングスペースの存在やその価値を知る人は増えています。コワーキングスペースをいいなぁと思っていても仕事をする場所があるから利用する機会がなかったり、利用していたのに働く場所が増えて利用しなくなったりする人がいます。会社に勤めているので、なかなかコワーキングスペースを利用できない人もいます。仕事の契約からコワーキングスペースを利用できない人や集中できるコワーキングスペースを利用していて、それでも仕事が終わったあとだけは交流したい人もいます。なんか面白いこと、なんかおもしろい出会いを探してる人はきっともっといっぱいいます。出張や旅行で地域の人と交流をしたい人だっています。立地も中央大通り沿いなので、働く人がたくさん歩く道に面しています。
コワーキングスペースの多様化ってもしかしてこういうこと?働く人が集まって楽しく出会える場所、関係を深められる場所、社会の課題、いろんな人の意見や動き、頭の中で、パチパチと音を立ててはまりだし、これで行けるかも!と思った瞬間、「できるんやろうか?」とものすごい不安が押し寄せてきて、怖いし、無理かも知れないって思いを無理矢理押し殺して3日前に契約してきました。(説明できてるんでしょうか…この表現で
 

最初スナックにしようと思ったけど、スナックだと大崎弘子の色が出すぎる気がして、Barになりました。真っ白から場を作りたい。わたしが中心になるのではなく、メンバーとして新しい文化形成に携わりたいと思っています。お酒はあくまでもきっかけで、お酒が飲めない人も気軽に来れる場所にしたいです、ガバガバお酒を飲見たくない人もゆっくり滞在できる雰囲気にしたいと思ってます。
ひとりになって自由になったけど、ひとりじゃ好きなことはできない、そう実感した人たちが新しい関係やおもしろいことを求めて集まって、自分たちのやりたいことが出来る環境を作ろうとしている時代だと思っています。同じように考えているかたがいたら、ぜひ連絡ください。
よいクリスマスを!
 
オオサカンスペース管理人大崎弘子 Merry Christmas!
死ぬほど昔の写真です

大崎弘子]]>

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